ステンドグラスでオールドアメリカンを感じるカフェサイン看板を製作
作り手によって大きく異なるステンドグラス
ステンドグラスはアンティーク市場ではもちろんのこと、日本国内でも人気の高い習い事や趣味として人気があります。
ガラスの種類や製作用の工具などなど基本的な材料や行程はどれも変わりはありませんが、はんだの盛り方や製作手順などは製作する作り手によって実に様々です。
作り手のクセやこだわりなど、お気に入りの作家がいるステンドグラスファンも多いのではないでしょうか。
当店では何千点ものアンティーク照明を修理、製造、加工した経験をふんだんに活かしながら今回のステンドグラス照明看板を製作しました。
ここではその行程を詳しく説明します。
ステンドグラスのピースから製作開始
デザインのこだわりはオールドアメリカン
アメリカの道路標識で最も有名なROUTE66。その道路標識の形状となった盾のデザインをパネルのメインにしました。
ROUTE66を代表するアメリカのイメージと言えばダイナー(レストラン)。60年代のROUTE66沿いの道路にはこうしたネオンや電飾で飾られたダイナーやモーテルがたくさんありました。
そんなダイナーで飲むのはもちろんアメリカンコーヒー。分厚いマグカップから今にも珈琲が香ってきそうな湯気が立つ看板やサインは、アメリカ各地のカフェやダイナーで見ることが出来ました。
ステンドグラスに使う色ガラスはアメリカンカラー
アメリカのイメージカラーは星条旗を表す赤・青・白。
グリーンはアメリカのハイウェイ(高速道路)の標識の色をイメージしています。
マグカップの色はシンプルな白に。星条旗の白はもちろん、アメリカの多くのカフェで見かける分厚く白いマグカップをイメージしています。
ワインボトルを溶かしてコーヒー部分のガラスを作る
コーヒー部分の茶色い色ガラスを作ります。アンバー色のワインボトルをフュージングと言うガラスを溶かす技法で製造します。
今回はコーヒーの深い色合いにぴったりのガラスをワインボトルに見つけることが出来ました。
写真は焼成できたガラス。これをマグカップのコーヒー部分にはまるように切削します。
色ガラスをカットしてガラスピースを製作
ステンドグラス用のガラスに印や番号をつけ必要なガラスをカットします。
簡単なラインはガラスカッターと言う手動工具、細かなラインはバンドソーを使ってカットします。
少し細かいピースになりました
ガラスをカットしながらアウトラインの確認
カットしたガラスがきちんと図面どおりに出来ているか確認します。
ガラスピースをカットしていくと、知らず知らずのうちに微妙なズレが出てきます。
図面に通りに並ぶように削りが足りないようなパーツを少しずつ微調整していきます。
はんだ付けのためのコッパーテープを巻きます
ガラスとガラスをはんだで繋ぐために、ガラスピースの縁(フチ)をコッパーテープで巻きます。
ガラスの表面と裏面に乗るハンダの量やバランスを考えながら慎重にテープを巻き、準備完了。
ガラスピースをハンダで繋いで1枚のパネルに
はんだ付けが完了
ガラスの両面からコッパーテープ部分にハンダを盛ってピースから1枚のパネルになった様子
ステンドグラスパネルの外周を補強する真鍮製の細板を製作
通常はケイムと呼ばれるU字型の鉛を使って外周を補強しますが、今回は照明付きの看板に仕立てるため、より丈夫に補強できる真鍮製の細い板を製作しました。
パネルの外周に沿うように一箇所一箇所、丁寧に手仕事で曲げていきます。
銅線をよじって飾り罫を作る
先ほど真鍮で補強した外周にロープのような飾り罫を付けます。
平らな線だけで補強したステンドグラスの縁(フチ)が平らで少し面白味に欠けるので、ロープのような飾り罫で装飾します。
補強と美しいデザインの両立
先ほど作った銅製のロープにハンダを染みこませながら、真鍮のフチにハンダ付けしていきます。
真鍮板で補強したパネルがロープでさらに補強され、見た目も美しい仕上がりになります
ガラスパネルの洗浄
ハンダの後は、専用の洗浄液を使ってガラス面を綺麗に洗い流します。
ハンダを盛り付けるために使うフラックスと呼ばれる誘着剤はを洗い流し、ハンダの腐食を防ぎます。
ハンダ部分を黒染めしてアンティークな雰囲気に
パネルを洗浄したあと、ハンダ部分にパティーナと呼ばれる黒染め液を塗ります。
真新しいハンダ跡が黒く染まり、古めかしいアンティーク調に変わります。
その後、保護剤を塗って看板照明のステンドグラス部分は完成。